平成25年8月18日 【日曜日

本日はいままで遠退いていた里山源流の最深部に単独で赴いて参りました。
中ほどまでは何人かの仲間の皆さんと出掛けたこともありましたが、それ以上の奥域にはお誘い致しませんでした。

里山源流に夢中の私が何故?、どうして?、初めの一滴までいつも勇んで出かける私が・・・・
実は踏み入れていない奥域には昭和初期の頃、山仕事と畑を営む人達の民家が数軒点在していたのです。
それは沢の水を飲み水にしていた痕跡と雑木林の斜面に建立されている墓石とお地蔵さまで判明致しました。
既に母屋は朽ち果て自然と一体化しています、沢の中に落ちている欠けた茶碗から当時の生活の一端を垣間見ることが出来るのです。

ここに棲息する岩魚達はきっとその方々が食材の補填に放流したもので、その末裔と考えられます。
私は過去にその奥域に踏み入るべく心を落ち着かせ入り口とおぼつく場所で丁寧に挨拶をし立ち入ったことがありました。
しかしそれ以上には足が進みませんでした、それは息苦しさと威圧感に押されてのことでした。
勿論お詫びを申してその場を立ち退いたのは言うまでもありません。
そんな場所に仲間の皆さんを招くことなど私には出来兼ねませんでした。

お盆も過ぎ一人でまったりと行く気になったのも何かのお導き、そして赴いて参りました里山源流お忍びの地へ。
今回毛鉤で釣り上がる予定ですが、ブドウ虫も持って行きます・・・なんだかいい加減!

そしていよいよの毛鉤を落とします、しかし毛鉤に興味を示すも岩魚はほとんどUターン、喰っても送り込もうとするものならポッと
吐き出される始末、なんと腕の悪い釣り人かな!
毛鉤を落とした瞬間に足が滑り竿先が水面下に刺さって穂先が折れそうに成り慌てて竿を放り投げてポッキン回避、
でも拾い上げた竿先に岩魚が付いていたのはお情けなのでしょうか!

そんないい加減な釣りをして釣り上がっていたらいにしえの地に到着です、ここでしっかりと挨拶を述べないと人ではありません。
お墓に手を合わせようと向かいましたが、ここでハッと息を呑みます、なんと墓石に花が手向けてありました。
まさかこんな僻地に・・・そうなんですちゃんと先祖様もしくは家族を敬いに足を運んでいらっしゃるお人がおるのです。
忘れ去られた弔いの場ではなかったのです、私は安堵と感激で暫しその場に立ち竦みました。

そして今日この奥に向かいますと述べ、つまさきを対峙する薮沢に向けたのでありました。
過去に味わった息苦しさなど全くなく、一人でも淋しさなどは感じず待ちに待った源流域に赴けたのでした!

小さな落ち込みに岩魚がいます、毛鉤をそっと落とすと見向きもしませんでした、邪道ですが持ってきたブドウ虫を毛鉤に刺し
そっと落としてみました、ガボッ・・・威勢良く喰い付きもんどり打つその魚体はこの薮沢に不似合いでした。
今日はきっと良き岩魚に巡り逢えるだろうとタモを携えてきましたので優しくキャッチ、雄の鼻曲がりでした。
ありがとうと元気でいろよの言葉を掛けそっと放ちました、やはり話し掛けると必然的に優しく扱います。

リリース派の方々はどうぞ出てくれた岩魚達に優しく話し掛けて上げて下さいネ。

          毛鉤とブドウ虫が見えています!

今日ここに来た甲斐がありました、季節が何度も過ぎてしまいましたが、気持ちの蟠りも消えなんだか清々しい気分で帰路に付けました。
今日はそんな不可思議且つ必然的と申しましょうか、人となりと申しましょうか、当り前な人の行動を垣間見た一日でした。
岩魚達が沢の守り神として未来永劫に渡り生き長らえて欲しいと心から願う、しがない老いた釣り人の遡行記です。


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