平成29年9月18日 【月曜日 回顧録  2017

17日台風にて出掛ける予定を断念、その代わりにミッチリ仕事を済ませ台風一過の本日に自身が掲げる里山源流の
原風景とばかり一番のお気に入りの沢にノンビリと一人で赴いてみました。

この沢は私の常である転んでも溺れない、一跨ぎの流れから驚きの岩魚、そして一人でもここならば家内も安心して送りだしてくれる沢なのです。
奥域に踏み入り相応のリスクを背負いながらそれに見合う対価を得るのも、また釣りの楽しみ方の一つですが、個人経営の私にとって骨折や入院は
年齢のいった家内を苦しみの巻き添えにしてはならないことが前提の趣味でもあります、これを回避するには出来得る限り安全な里山の流れで
岩魚と対峙でき且つ一端の釣り人として満足できる流れを見付けることでした、これはあくまでも単独での行動範疇ですが。
地図を参考に里山近隣の方々に耳を傾け己の足で兎に角探しました、そして長年の情報の中からこの藪沢の一つを知ることとなったのです。

本日赴いた里山源流はドブのような河川から入って行きます、但し放流魚は大滝に阻止され遡上できないそんな場所です。。
それに奥域に行くにはちょっと勇気が必要です、それは古の頃の朽ち果てた跡が数か所見られるのです、私にはそれが肌で感じ取れるのです!
初めてそこへ踏み入った時、沢の底に持ち主との再会を待ち続け清らかな流れで身を洗い煌びやかなまでに輝くお茶碗が私の目に映りました。
私は不気味さより半世紀以上も流されずに待ち続けているこのお茶碗に気を惹かれました、もっとも再会は叶わぬのですが。
それでもそっと沢底から拾い上げ地上に置こうとしましたがなにか虚しくなり以前のように輝いてもらおうと再び沢底に戻しました。
そうです古の頃持ち主の掌に支えられたあの頃に戻るべく元の位置に戻すのが妥当なのでしょうネ。

そして人として慈しむ心を辺りの雰囲気から窺い知り、この地で暮らしておられた古の方々の強さに感銘を覚えたことを覚えています。
それは墓碑が数基建立されていたことでした、しかもお花が手向けてあるのには正直驚きでした。
きっと祖先の亡骸を慈しみお墓参りに来られたのでしょう、此処へ参る私の知らない道が多分存在すると思われます。

私はこの地で様々な体験をしました、また実際に目の当たりにしてきました、それでも一番足蹴く通った藪沢なんです。
盆近く奥域に入るのを威圧され断念したこと、誰とも分からぬおなごとすれ違ったこと(この時は怖かった、挨拶の声が出せなかった)
でも自身は何一つ悪いことはしていないので怯むことなくいつも通りでいました、何か遭ったらそれは理不尽ですよネ。
余り詳しく書くとあの時を思い出すのでこれくらいでよしましょう。

好意にしていただいている方から「誰とも分からぬおなごとすれ違ったこと」の詳しい経緯を書いて欲しいとのリクエストがありましたので
その当時を思い出し載せさせていただきます。
随分前の事です、確か梅雨が開け朝霧の残った早朝一人源頭に向かっていた時の事でした、所どころに鉤を落としながら進んでいくと何やら
胸騒ぎが、ふと正面に顔を上げると朝霧の中にぼんやり白い人影が、風体はおなごの様子でいわゆる「山が風かるさん」という着衣!
穏やかな山間とは打って変わり私を俯瞰する物凄い威圧感で何もできませんでした、動いたらおかしくなる雰囲気でした。
その白い物体が瞬きと同時に瞬間移動してくるのです、目を見開いている時は動かず、瞬くとこちらを目掛けてとてつもない速さで移動してくるのです。
記憶ではくるぶしから下は見えませんでした、顔も表情が窺えないほど薄かったような、私とすれ違った時以後の消息は全くありませんでした。
いま思えば自身固まっていたのでしょう、殻に閉じこもったとでも言いましょうか、それ以上の情報は無用でした。
そんな不可思議な体験をこの流れから受けました。

そうそう8年も前の事です、この奥域に行くには中程に有る1.5mほどの小滝をのっこして行くのですが、左岸から大きな岩がハングしています。
これが崩れたら潰されるなーといつもびくびくしながら通り抜けていました、そこの小さな溜まりでは結構な型の岩魚が必ず顔を見せてくれるのです。
その日はそこへ差し掛かる約100m程手前でしつこいくらいに岩魚の集中攻撃に合い足止めをくらいました。
そのうちズドンと太い音が響き渡り何かが崩れ落ちた気配を感じました、遡行していくとハングしていた岩の塊が小滝横に崩れ落ちているではありませんか!
もし彼らの足止めを軽視し遡行していたならこの時どうなっていたことやら、いま考えると不思議なことです。
ただの偶然、気のせいかもしれませんが、この地ではこんな様々なことが己の身に降りかかって来るのです。
それでもこの地が好きなんです、訳分かりませんが一人で赴くことも一番多く、また一人で佇んでいると不思議と高揚感を覚えるのです。

皆さんにもそんな気持ちが落ち着くような、くつろげる流れが有りますか、是非人生のお供に釣り人ならではの場所を見付け下さい。
唯一日記として残したい藪沢の回顧録でした。

 
 【私一番の里山源流原風景、好きだな〜!】


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